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2026年、民泊は「拡大」から「整理」へ
建築士の適合証明が必要になった理由

2026年の規制まとめ 2026年9月11日 二級建築士・宅地建物取引士 芹川秋人

「200㎡以下だから、建築確認はいらないはずですよね」

旅館業の許可を取ろうと保健所に相談に行き、そこで初めて「建築士の証明書をもらってきてください」と言われる。2026年に入ってから、こうした相談が増えています。

制度が変わったのは事実です。ただ、変わったのは多くの方が思っているのとは少し違うところでした。

この記事では、2026年に実際に何が起きたのかを時系列で整理します。5月の通達、大阪市と渋谷区の動き、そして7月に国が示した方針転換まで。読み終えるころには、ご自身の物件で次に何を確認すればいいかが見えているはずです。

3行でわかる要点

  • 5月、旅館業許可の入口で、建築基準法への適合確認が厳しくなった
  • 7月、自治体が条例で民泊を禁止できることが、国から明確化された
  • 200㎡以下で確認申請が不要な点は変わらない。変わったのは許可時のチェック

なぜ「200㎡以下なら簡単」と言われてきたのか

まず、その前提から確認します。

民泊や旅館業をめぐるルールは、ここ数年ずっと緩和の方向に動いてきました。「200㎡以下なら確認申請はいらない」という知識が広まったのにも、はっきりした理由があります。

時期何が起きたか
2018年6月住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行。届出制で、年間180日以内の民泊が可能になりました
2018年6月旅館業法の改正が施行。最低客室数(旅館5室・ホテル10室)が撤廃され、1室から営業できるようになりました
2019年建築基準法が改正。用途変更の確認申請が不要な範囲が、延べ100㎡以下から200㎡以下に拡大されました

この3つが重なったことで、戸建てや空き家を宿にするハードルは大きく下がりました。「200㎡以下なら確認申請がいらない」という知識が広く共有されるようになったのも、この頃からです。

2026年、流れが変わった

ところが2026年に入り、向きがはっきりと変わりました。性格の違う4つの動きが、数か月のあいだに続いています。

ひとつずつ見ていきます。建築に関わるのは最初のひとつですが、残りの3つも「これから物件を探す」「今の物件をどう使うか」を考えるうえで無視できません。

5月28日|建築基準法への適合確認の徹底

厚生労働省と国土交通省が連名で、「旅館業の許可時における建築基準法への適合確認の徹底について」という通知を出しました。

ここで誤解されやすい点があります。この通知は、200㎡以下を新たに建築確認申請の対象にしたものではありません。確認申請が不要という整理は、2019年の改正のまま変わっていません。

変わったのは、旅館業の許可を出す段階でのチェックの厳しさです。建築確認申請が不要であることと、建築基準関係規定に適合していなくてよいことは、まったく別の話です。適合の義務そのものは、以前から変わらず存在していました。

そこで、許可の審査にあたって保健所がその適合を確認するようになり、確認の方法として建築士による適合証明の提出を求められる場面が出てきた、というのが今回の流れです。

5月29日|大阪市が特区民泊の新規受付を終了

大阪市が、特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)の新規受付を2026年5月29日で終了しました。ゴミや騒音をめぐる苦情の急増、最低宿泊日数違反といった運用上の問題が背景にあるとされています。

市は2025年9月に方針を決め、11月28日付で内閣総理大臣の認定を受けて正式に決定しました。すでに認定を受けた施設は営業を続けられますが、新規の入口は閉じられたことになります。

7月1日|渋谷区の改正条例が全面施行

渋谷区では、住宅宿泊事業の条例が改正され、2026年7月1日から全面施行されました。

7月15日|国が「ゼロ日規制」を容認

観光庁・国土交通省・厚生労働省が連名で、「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」を全国の自治体に通知しました。

これが大きな方針転換です。国はこれまで、区域を定めて民泊を実質的に禁止する「ゼロ日規制」を適切ではないとしてきました。今回の通知は、それを事実上容認する内容になっています。

誤解しないために。これは全国一律で住宅地の民泊が禁止されたという意味ではありません。国が直接禁止したわけでもなく、実際にどこまで規制されるかは各自治体の条例によって決まります。ご自身の物件がある自治体の条例を確認してください。

なぜ、引き締めに転じたのか

背景にあるのは、おおむね次のような事情だと考えられます。

結果として、行政は宿泊者の安全近隣の生活環境の両方を、許可や届出の段階で確認せざるを得なくなりました。建築士の適合証明が求められるようになった背景も、ここにあります。営業が始まってから問題が判明するのでは遅い、という発想です。

民泊と旅館業、どちらに適合証明が要るのか

「民泊」と一口に言っても、根拠になる法律によって必要な建築手続きは変わります。

比べるところ民泊(住宅宿泊事業法)旅館業(簡易宿所営業ほか)
手続き届出許可
営業できる日数年間180日以内上限なし
建物の扱い住宅のまま特殊建築物(用途変更)
200㎡以下の確認申請原則として不要不要でも適合自体は必要
建築士の適合証明原則として求められない求められる場合がある

建築士の適合証明が関わってくるのは、主に旅館業許可の側です。年間180日を超えて営業したい、通年で貸したいという場合は旅館業になり、そこで建築の確認が入ってきます。

よくある質問

200㎡以下なら確認申請はいらないはずでは?

いりません。そこは2019年の改正のまま変わっていません。変わったのは、旅館業許可の審査で適合を確認する運用です。確認申請が不要であることと、建築基準関係規定に適合していなくてよいことは別の話です。

すでに民泊として運営している物件も影響を受けますか?

7月15日の通知では、弊害が生じている地域について、既存の民泊に対する制限も可能と明記されました。お住まいの自治体の条例を確認してください。

6月30日までに届出をしていれば大丈夫ですか?

渋谷区のように経過措置が設けられている例があります。ただし、自治体ごとに扱いが異なります。

これから物件を買うのは避けるべきですか?

地域によります。立地規制のかかる区域かどうか、旅館業で通年営業する前提が成り立つかを、買う前に確認することが以前より重要になりました。

建築士の証明は、誰でも出せるものですか?

建物の資料と現況を確認したうえで、適合を確認できた場合に作成されるものです。資料を見ただけで必ず出せるものではありません。現況が図面と大きく異なる場合や、未申告の増改築がある場合は、追加の調査が必要になることがあります。

検査済証がない古い物件はどうなりますか?

確認済証や確認申請図面があり、現況との相違が小さい場合は、書類をもとに進められることがあります。一方で、書類だけでは判断できない場合は、追加の確認や12条5項報告書などが必要になることがあります。

これからどうするか

これから始める方

  1. 候補地の自治体の条例を先に確認する(立地規制の有無)
  2. 民泊(年180日)で進めるのか、旅館業(通年)で進めるのかを決める
  3. 旅館業で進めるなら、買う前に建築面の可否を確認する

すでに運営している方

  1. 自分の物件が制限区域に入っていないかを確認する
  2. 経過措置の対象かどうかを確認する
  3. 180日を超えて営業したいなら、旅館業への切り替えを検討する

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主な参照先

  • 厚生労働省・国土交通省「旅館業の許可時における建築基準法への適合確認の徹底について」(令和8年5月28日)
  • 観光庁・国土交通省・厚生労働省「住宅宿泊事業法に規定する届出住宅に係るゼロ日規制等について(技術的助言)」(2026年7月15日)
  • 渋谷区「住宅宿泊事業の適正な実施の確保に関する条例」(2026年7月1日 改正施行)
  • 大阪市「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」新規受付終了(2026年5月29日)

本記事は制度の一般的な整理であり、法的助言ではありません。適合の要否・可否、必要となる書類、立地規制の内容は、物件の状況と管轄自治体の運用によって異なります。最終的な判断は、行政窓口および専門家にご確認ください。記載の日付・数値は公表資料に基づいていますが、その後の改正等により変わる場合があります。